歯周病とは
歯が丈夫な人ほど危ない!
気づいたときには顎の骨(歯槽骨)が溶けている歯周病の恐ろしさ 痛みや顕著な自覚症状がないままに進行してしまう歯周病。
その原因は、口の中に常在している歯周病菌と呼ばれる細菌である。
歯を磨いているときに歯ぐきから出血があったら歯周病の赤信号。
初期段階で叩くことが歯周病治療のポイントだと若林先生はいう。
今も静かに進行中・・・・・。40代で歯周病菌が大勢に
昔懐かしいCMに「お肌の曲がり角」というものがあった。
それをモジった「お腹の曲がり角」や「頭(毛髪)の」曲がり角は半ば冗談だが、笑い話で済まされないのが、「口の中の曲がり角」(!?)である。
「30代位までは、虫歯菌が口中で大勢を占めています、だから虫歯にもなりやすい。
ところが40代あたりから、それが歯周病菌に切り替わるといわれています。
ですから、『近頃、虫歯ができなくていい』なんて、喜んでいられない。
その間に歯周病が進行しているケースが実に多いのです。
また、なまじ歯が丈夫な人は歯医者さんに行きませんから、歯周病になっていても気づかない場合が多いですね」
と、東京・目白にある若林歯科医院の若林潤院長。
歯周病についてはさまざまなデータがあるが、日本人の30代以上の約80%が歯周病にかかっていると言われている。
また歯を失う原因を見ても、虫歯30%、外傷10%で、残りの60%近くは歯周病によるものだという。
こうなると、もはや歯周病は国民病といってもいい。
歯周病が恐ろしいのは、静かに進行する病気だということである。
つまり初期の段階では虫歯のように歯に穴が開いて痛んだり、冷たいものがしみるといった、はっきりとした症状が出にくく、かなり進行してからでないと、膿が出たり、歯がぐらつくといった自覚症状が現れないのだ。
気づいたときには歯肉の中にある顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまい、歯を抜かざるをえない状態になっている。
それゆえ、歯周病の事を「沈黙の病」、「静かなる疾患」と呼ぶことさえある。
歯垢=細菌の排泄物 歯周病は初期治療が重要
「歯周病は細菌感染によるものです。私たちの口の中には、およそ400種類の細菌がいます。
そのうち歯周病の原因となる主な細菌は5種類くらい。
それらの最近は食べかすを栄養源にしています。
私たちはものを食べると排泄しますが、同様に細菌も排泄物を出します。
ネバネバ、ヌルヌルしたその排泄物が歯垢(プラーク)で、これが歯周病を引き起こす直接の原因です。
歯垢は酸を出して歯を溶かしていき、やがて神経を侵す。それが虫歯のメカニズム。その一方で、歯垢からは毒素が産生されます。
この毒素は歯には全く興味がありません。
興味があるのは、歯ぐき。
そもそも歯周病菌は嫌気性ですから、歯と歯ぐきの境目の歯周ポケットから歯肉の中へ中へと入っていきます。そして、歯肉の中に居座って炎症を引き起こします。
それが歯周病の初期段階の歯肉炎です。
その炎症が歯槽骨まで及んで、骨が吸収した(溶けた)状態が歯周病です。
昔は歯槽膿漏と呼んでいました。
また、歯垢は唾液中のカルシウムなどと合体して歯石になります。
この歯石がついてしまうと、そこに歯垢が付着しやすくなり、さらに歯周病を悪化させる原因になります。」
若林先生は歯周病のメカニズムについて、そう解説する。
細菌の排泄物とはつまり細菌のフン。
そのフン自体が歯垢であり、歯周病を引き起こす。
なんとも迷惑な話だが、この歯垢を取り除くこと、すなわちプラーク・コントロールが歯周病対策の根本であり、さらに歯周病へと移行する前の段階、つまり歯肉炎の段階で適切な処置を施すことが歯周病治療の大切なポイントだと、若林先生は話す。
「歯を磨いたときに、歯ぐきから血が出たら、歯肉炎だと思ってください。
この段階で、すぐにも治療を始めるべきですが、痛みがないので、ほとんどの人はそのままにしておく。でも、考えてみてください。
もし、お風呂で身体を洗っているときに、皮膚から血が出たらどうしますか。
おかしいと思って病院に行くでしょう? 歯ぐきも体の一部なのです。
歯を磨いて血が出たら放置せず、歯周病治療に力をいれている歯科医に相談してみてください。
それが歯周病を食い止める第一歩です」
皮膚に例えて歯周病の初期症状である歯肉炎についてわかりやすく説明してくれる若林先生だが、皮膚と歯ぐきの決定的な違いがある。
皮膚は切っても自然治癒することがあるが、歯肉炎や歯周病、あるいは虫歯といった口の中の疾患では自然治癒はないので、歯科で治療するしかないのだ。